スタバやPAULなど、外来チェーン店が街角に溢れる今日この頃。都心、芝公園の木陰にひっそりたたずむ欧州風テラスカフェに気づいた方もいるはず。昨年、 西新宿オペラ・シティにも二号店をオープンした、ベルギー発のベーカリー・カフェ「Le Pain Quotidien」だ。
再開発が進む下町ダンサール通りにある「Le Pain Quotidien」第一号店 ©Michiko Kurita
店名の由来は、欧米人が幼い頃から繰り返し聞いて育つ祈りの句「日ごとの糧」だが、フランス語を知らない人には読みづらいだけに新鮮だ。ホームペー ジで「luh paN koh-ti-dyaN」と発音が解説されているのは、同社が今や、ベルギー周辺ばかりでなく、本部をニューヨークに置き、直営・フランチャイズあわせ て、世界25都市に181店(2012年末)を展開する国際ビジネスに発展したからだ。近年、南米やアジアの都市にも進出し、東京近郊では、今年、新たに 二店オープンする予定だという。
そもそものスタートは1990年。お客様に出したいパンがないことに落胆したシェフ、アラン・クモンが、石臼で挽いた有機小麦粉を塩と 水だけでこねて、「昔、おばあちゃんが焼いてくれたパン」を蘇らせた。ブリュッセル旧市街ダンサール通りに開いた店には、近くの蚤の市で手に入れた大きな 木製の丸テーブルを置いた。
今でこそ、デザイナーやアーティストが多く住み着くこの地区だが、当時は、冴えない下町。お客様達は、ごく自然に丸テーブルに相席し、家族か近所の 顔なじみのように談笑しながら、チョコペーストやジャムをシェアした。このテーブルは、「コミュナル・テーブル」と呼ばれ、いつしか店のトレードマークと なった。
トレードマークの「コミュナル・テーブル」では談笑が弾む ©Michiko Kurita
「古き良きもの」を再現する都会の小さな田舎ベーカリー・カフェは、次第に店舗数を増やしていったが、国際的にブレークし始めたのは、2003年、 もう一人のベルギー人ヴィンセント・ハーバートが参画してからだ。ビジネススクール出身のヴィンセントは、Wall Streetで活躍していたが、アランとの出会いを転機にCEOとなり、経営者として辣腕を振るい始めた。株主7名による非上場企業は、2012年、年商 約3億ドル(約300億円)を超えた。
「古き良き」パンの並ぶ懐かしい木製のカウンター ©PQ Belgium
ベルギーは人口1千万人の欧州の小国だ。周りをフランス、ドイツ、英国、オランダという、言わば「キャラ」の強い列強に囲まれ、今ひとつ、目立た ず、垢抜けない。しかし、時々、おっと言わせる快進撃を見せることがある。コンセプトに共通するのは、気負わず、何気に、本物志向。
今、ベルギーで急成長中の、もうひとつのチェーン店がある。食の質を重視するベルギー流ファースト・フードExki(エクスキ)だ。今年、待望の NY進出とのことだが、アジアにはまだない。先輩に追いつけ追い越せと奮闘中だが、世界銘柄化したル・パン・コティディアンは、「ライバルはおばあちゃん の味」と、気取らない余裕を見せる。ベルギー人はアメリカ流ファーストフードを好まない。素朴、手作り、食の質を追及する、そんなベルギー流は、日本人の「日々の糧」となりえるだろうか。
ベルギー流社会派ファーストフードのExki
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ル・パン・コティディアン(日本語サイト・Flash)
(2013-02-07 PUNTA掲載)