ミールウォーム入りの野菜ペーストは大手スーパーも扱いだした
写真提供GreenKow、© Philippe Daman – Belgium
時になかなかリベラルなベルギー人だが、それにしても驚いた。欧州で始めて、昆虫食を商品化してしまったからだ。それも、ゲテモノ食いの特殊なレストランや仰天バラエティ番組でのことではない。グルメな品揃えで定評のあるベルギー大手スーパーが、2014年10月、ミールワーム(ゴミムシダマシの幼虫)入り野菜スプレッド『GreenBugs』トマト味とニンジン味の2アイテムを販売し始めたのだ。
大手スーパー店頭で売られる虫入り野菜ペースト 筆者撮影12月
ところがちょっと調べてみると、この製品を導入したベルギーのメーカーは、自社ブランド『GreenKow』(グリーン・カウ、こちらは有機食品認証)をすでに1年前から自然健康食品店チャネルで販売していたという。今年はラインアップにチョコペースト2アイテム追加した。さらに、ベルギーでは「昆虫」を商品化し市場導入したのは、このメーカーばかりではない。Damhert(ダムヘルト)はバッファロー・ワーム入りのハンバーガーやナゲットのブランド『Insecta』(インセクタ)を導入。乾燥したバッタや幼虫そのものをスナックや料理の材料として商品化した『Bugs in Mugs』(バグス・イン・マグス)という生産者メーカーまである。
バッファロー・ワーム入りのシリーズInsectaはハンバーガー、ナゲット、そしてシュニッツェルがある
©Damhert
乾燥した虫そのものの「お試しセット」は入荷すると飛ぶように売れてしまうという
©Bugs in Mugs
食の安全や消費者保護にきわめて厳格なEU。アメリカや日本ではどこにでもあるGM(遺伝子組み換え作物)でも、EUではいまだ人間の食用には許されていないというのに、食材や食品として昆虫を市場化することへの法規制はないのか。EUでは、1997年の法律で、それまでに存在していなかった食材については、新食材として分析の上、適合審査が必要とされている。Green Kow社の商品化を受けて、ベルギー食品安全庁AFSCAが動き、2014年5月、10種類の昆虫を食品・食材として認可。専門家によれば、昆虫は、甲殻類やダニなどと同じ成分を含むので、アレルギーには注意が必要だが、油脂分の少ない高品質なタンパク源でミネラルも豊富。衛生的に飼育すれば理想的な食材だという。
それにしても、虫は虫。正直言って、食欲をそそられるもではない。タンパク源は、地球規模で見れば、近い将来不足すると言われているが、今日欧州では食肉や乳製品は生産過剰。ベルギーはその典型で、あえて虫にまで手を出さなくても、タンパク源は十分過ぎるほどある。なのに、なぜ今、昆虫食なのか。市場性は本当にあるのだろうか。
パイオニアであるGreen Kowのウイマンス氏は、「昆虫こそが未来のタンパク源だと言われ続けて30年。いつまでたっても『未来の』と言い続けるわけにもいかない。誰かが始めなければ」と着手した。Insectaを導入したDamhert社は、自然・健康食品のリーダー。「昆虫は、飼育に要するスペースや餌、廃棄部分が少ないので、エネルギー効率が良く、二酸化炭素削減につながる。その上、美味しい!」と自信たっぷりだ。
いくら良いことずくめでも、イモムシやバッタを口にすることに消費者の抵抗はないのか。メーカーは「単なる食文化の問題」と口を揃える。南米でも、アフリカでも、アジアでも、地元の食材として虫を食べてきた地域は少なくない。確かに、日本でも、長野県などの山間部では伝統的にイナゴの佃煮を食べてきたし、フランス料理で親しまれるエスカルゴ(カタツムリ)だって似たようなものだ。見た目で直観的に「美味しそう」と感じにくいというなら、ナマコだって、ウニだってそうだろうし、「最初の抵抗」さえ突破すれば、イモムシも以外と美味と感じられるのかもしれない。
とまれ、売れ行きは? 調理番組ブームで人気上昇中の新食材や面白調理セットを販売する店で聞いてみると、「Bugs in Mugsのお試しセットは入荷すると飛ぶように売れてしまう」という。ブリュッセル自由大学の学食で、11月に試験販売された虫入りバーガーなどのランチは、毎回用意した400食があっという間に売り切れた。前述の大手スーパーのプレス担当者も、「発売からまだ日が浅く数字では示せないけど、顧客の反応に十分満足している」という。取材した各社とも、輸出には乗り気。日本からの引き合いを楽しみにしている。
(2014年12月、PUNTAに掲載された記事の原文)