昨今の日本では三が日を終え、七草粥の便りを聞く頃には正月ムードが終わる。ベルギーなど北ヨーロッパでは、ホリデーシーズンは、クリスマス・ツリーを飾りつけることで始まり、それを片付けることで区切りを打つ。
お役目終えて道端に捨てられるクリスマスツリー
エコ志向が強く、何かと使い捨てを毛嫌いする欧州だが、クリスマス・ツリーだけは本物のモミの木を使い捨てる。毎年1月6日を過ぎた頃から、街のあちこちに「御用済み」ツリーが捨てられている光景がなんとも痛々しい。
ちょっと調べてみると、御用済みツリーの処分方法は、欧米でも地域や国によってまちまちらしい。町内で集めたものを、どんど焼きよろしくたき火にして燃やしたり、動物園で利用したりするらしい。ベルギーでは、あらゆるゴミの収集を組織する行政が、1月6日を過ぎた頃から2回の収集日を設 定。専用車がやってきて回収し、粗大ゴミや特殊なゴミ専用のコンテナパーク内にある「緑のごみ捨て場」まで運び、ここで堆肥にされる。
「緑のゴミ」とは、庭の芝刈りや垣根の剪定などで出た枝葉などで、庭業者が持ち込むほか、家庭からも年間を通して月2回の回収日があり、再生紙で造 られた専用の大袋に入れて出しておくと回収されて、同じように堆肥化される。ここで作られた堆肥は購入することもできるが、1トン単位で5EUR。運賃の 方が高くつく。
1月6日以降にやってくるツリーの回収車 (c)City of Waterloo
そもそも、たかがモミの木とバカにはできない。ベルギー人はその品種にもウルサイ。最もスタンダードなエピセアは国内で大量に生産されているので廉 価だが、クリスマスを過ぎた頃から葉が落ちて始末に悪い。ノルマンはデンマーク産が多いが、心地よい緑の香りに気品があり、深い緑色がエレガント。枝葉は 柔らかく長持ちする。これ以外にも、いくつかの品種があり、それぞれ長所短所があり、値段もまちまち。その上、これにエコ配慮が加わると、評価選択基準は さらに複雑だ。
どんなに香しく美しいモミの木でも、遠い外国から運んでくるより、国内産で地産地消した方が環境に負荷がかからない。通常5〜10年はかかるという モミの木の生育を短期間で行うには、過剰な化学肥料や農薬が使われがちだ。そのため、近頃では、環境的・社会的に正しい農法で生産されたエコラベル付きモ ミの木も登場。使用後に土に戻されることを前提に、鉢植えのモミの木が売られたり、リースされたり、さらにはツリーを「養子縁組」して翌年まで畑で預かっ てもらう制度まである。
いくら堆肥にしたり、無農薬にしたりしてみても、使い捨てするよりは、使いまわしの利くプラスチック製の方がよりエコロジーではないのか。ところ が、分析によれば、アジアなどで製造される廉価のプラスチック・ツリーは、環境に悪い原材料を用い、遠距離輸送され、廃棄後のリサイクルや生還元も不可 能。3年使用を前提とした計算上は、生のツリーの方が環境的に優れているのだという。
コンテナパークの「緑のごみ捨て場」でツリーは堆肥となる
ベルギーは人口1000万人の小国ながら、デンマークに次ぐモミの木の生産国で、年間出荷量は300〜400万本。多くが近隣国に輸出されるが、輸 入も少なくないので、少なく見積もっても三軒に1軒は、毎年、生のモミの木を買っている計算になるという。品種や大きさにもよるが、モミの木一本の値段 は、40〜100EURでプラスチック製に匹敵する。それでも、本物にこだわるのは、エコ志向ばかりではあるまい。
暗い雨雲が低く垂れこめ、ジメジメと寒い日が続く北欧州の冬。緑を眺め、生きた香りに包まれながら、ひとときのロマンを楽しみたくもなる。春はまだ遠い。
クリスマスツリーの養子縁組「Treezmas」の仕組み (c)Treezmas
(PUNTA掲載 2015-01-26)