ベルギー代表より地元チーム!
国より地域に目を向けよう!
国歌が歌えない?!
愛国心がない理由
ベルギー国歌、歌えます?と聞かれて、フランス国歌を歌ってしまった某首相――彼が同情されてしまうほど、ベルギー人はだれも国歌が歌えない。オリンピックも、サッカーのW杯も、「あらそう、今やっているの」という感じで、盛り上がりに欠くどころか、話題にもならない。どうやらこの国の人々には、愛国心以前の、ベルギー人としてのアイデンティティすらないらしい。
この辺りのヨーロッパ史と地理をひもとくにつれ、そのわけが少しずつ見えてきた。今、ベルギーがある辺りは、シーザーに始まり、ハプスブルグ家傘下のスペイン王、ナポレオン、ヒトラーらが次々と踏み込み、土地の人々の思惑とは関係なく国境が書き換えられてきたヨーロッパの十字路。今のベルギーが、列強の駆け引きと妥協の産物として造られたのは1830年。近年も分裂問題がくすぶり続け、6月の総選挙以来、またしても無政府状態が続き、今度こそ本当に・・とささやかれている。が、人々に緊張感はない。淡々と、バカンスや美食の準備に余念がない。「僕の親族は、ずっとここらに住んで、うまいもの食って生きてきたし、僕の先祖もそうだし、祖先もそうだろうから、国なんて関係ない。」
確かにねえ。そう考えてみると、国歌も国旗も、サッカーやオリンピックのベルギーチームも、どうでもいいわけ。大事なのは、私、親族、地元の仲間。地ビール飲んで、地元の学校や政治家の評判や陰口が言えるようになって、地元特有の言い回しがわかるようになっていったら、自分の中で、国の枠がぐぐぐいっと下がって、地元の枠がぐぐぐいっと持ち上がって、金メダルの獲得争いを伝える大国の熱狂アナの声がしらけて聞こえてきたのだった。
あくまでニュートラルに
「国際」英語に努めたら
コミュニケーションで思い出すことがもう1つ。ベルギーの国語は、蘭仏独の3つだが、EUをはじめ、1000以上の国際機関があるブリュッセルでは、英語の通用度が極めて高い。アメリカから来た当初の私は、臆面もなくアメリカ英語でしゃべりまくり、どうやら、かなりのひんしゅくを買っていたらしい。
大陸ヨーロッパでも、ビジネスや学会の言語は英語が中心。でも、それは、アメリカンでも、ブリティッシュでもない、ニュートラルな便宜上の共通語「インターナショナル・イングリッシュ」。スラングや地域性の強い慣用句を避け、誤解のない語句や表現を意識的に選んで使い、アメリカ仕込みの鼻にかかった巻き舌音をやめ、Tをはっきり発音してみたら、国際人としてここの知識人たちに受け入れられ始めたと感じたのだった。
(アルク、月刊アルコムワールド 2010年10月号掲載)
にほんブログ村